Wonder by R. J. Palacio レビュー【書評】【英語多読】

・あらすじ

先天的な異常で、顔が崩れてしまっている10歳(11歳かもしれない、小学校高学年くらい)男の子の物語。顔が崩れてしまっているというのは、顔を構成するパーツ(目・耳・鼻・口など)が、あるべき場所にないという意味です。

物語は、男の子(August)が、学校に通い始まるところから始まります。Augustはこれまで家庭で教育されていましたが、新学期を期に、小学校に通い始めることになります。当然のことながら、顔のせいで、学校に入った当初は気味悪がられるのですが、友人もでき、だんだんと馴染んでいく。そうした矢先、ハロウィーンの日にある事件が起こります。

・構成

この物語は、劇中に登場する様々な人物が、ある一定のチャプターごとに入れ替わって、一人称視点で話が進みます。そうすることで、Augustの回りの人物が、どのような思いをもって彼と接しているか、だけでなく、彼ら一人一人がそれぞれ問題を抱えていることが分かります。確かに、Augustが抱えている問題は彼特有のユニークなものだけれども、しかし、悩みを抱え、それと格闘しながら大人への階段を上っていくという点では、他のティーンエイジャーと変わらない。そうしたことがだんだんと分かってくるという仕組みになっています。

・面白いと思った点

この物語は障害者について扱った話です。しかし、障害者をかわいそうな人、誰とも共有できない特殊な悩みを抱えている人だと描くのではなく、問題を抱えている普通の人だとして描ききった点。この点に、本作の最も素晴らしい点があると思います。

実際、この本は、小学校高学年の男の子の成長物語として見ただけでも、大変面白いと思います。また、登場人物一人一人に個性があり、しかも魅力的です。残念ながら、本作では一人称を与えられなかった人物も多いのですが、そうした人、特に、Augustの母親と父親視点からの物語も見てみたいと感じます。

・批判点

Augustを、やや美化して書きすぎているような気はしています。特に、Augustが科学や芸術において高い才能を見せる部分や、仲間をジョークで笑わせるシーン。そのようなシーンを見ると、「Augustは人間として素晴らしいから、受け入れてもらえたんだ」という風に見えなくもない。しかし、「人格者だから、特殊な才能があるから」障害者でも受け入れてもらえるのではなく、「人間だから」受け入れてもらえる。そういう描き方をすべきだったのではないかと思います。(本書全体として伝えたいメッセージはそういうことだと思いますが)

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