Flowers for Algernon 感想

・ストーリー

知的障碍者の男が手術を施され、常人を超える頭脳を手に入れる。それによって彼は、今まであることすら知らなかった様々な世界を知る。しかし、男が施された手術は完璧ではなかったため、男はいずれ自分が元のIQに戻ることを悟ってしまう。残された時間は少ない中、男はその頭脳を用いて自ら研究を進め、手術のどこに問題があったのかを突き止める。原因を突き止め、論文にまとめあげた瞬間、それを頂点として男の頭脳は崩壊を始めるのだった。

 

・感想

「感動的」「教訓的」という言葉で収まらない作品という表現が最もしっくりくる。

①知的障碍者に対する差別を隠すところなく描いている

知的障碍者は、人間扱いされていない、という事が分かる場面が繰り返し現れる。しかも、そうした差別の多くは悪意からではなく、パターナリズム的な善意が下敷きになっている。このような構造は知的障害だけでなく、あらゆる差別に対してあてはまるのではないかと思う。

②分かりやすい「良い話」にストーリーを吸収させない

知的な障害から解放されたからといって、全てが良くなるわけではない。変わっていく主人公に対する周囲からの軋轢も描かれる。加えて、主人公は知能が人並み以上に上昇したことによって、周囲から、「人間的な温かみ」が失ったと言われる。そうした指摘にはもちろん、かつて主人公を見下していたやっかみも含まれている。ビルドングロマンというか、単純かつ線形な人間の成長を前提としない物語が展開されている。