レイジングループ 感想

・出題編は非常に良かったのだが…
人狼をテーマにしたテキストアドベンチャーゲーム。ちょっとギャルゲー要素もある。
山奥の村を舞台に、リアルで「人狼」ゲームを行う、という設定。いわゆるループものでもあり、主人公は死んでも記憶を引き継ぐことができる。
本作はミステリーとして読むことができる。その場合回答されるべき謎は大きく3つ。
①だれが人狼なのか?(あるいは、誰がどのような役職についているのか?)
②なぜ「リアルな」人狼ゲームが成立しているのか?
③なぜ主人公はループしているのか?
このうち、①は各ストーリーで明かされるものの、②と③はストーリーを重ねることで見えてくる。謎が多層的で読者を飽きさせない作品になっていると言える。

 

・回答編は駆け足すぎるし、回答に一貫性がない
このゲームのライターさんは謎を謎のままにしておく気がない、非常に信頼できる人物だということがゲームをすることで伝わってきた。
なのだが…

 

 

 

 

 

 

---ここからネタバレ---
冒頭の謎のうち、②と③で答え方の方向性が違いすぎると思う。②に対しては徹底的に、ありとあらゆることを「技術的にできること」として詰めるのに対し、
③に対しては(技術的にできないからだろうが)超常現象的な回答になっている。
ここは個人的にうーんと思うポイントで、②と③で一貫してるならともかく、②で無理やりいろいろなことに説明をつけたのがトンデモ回答すぎてついていけない。そんなんありかよ!って思ってしまう。
特に技術的に可能か、ということではなく、「人狼ゲーム」をなぜ受け入れる、ということに対する心理的な回答の部分が弱いと思う。作中でも一応、人が「正しさ」を求める心が、みたいな話は入るが、正直、説得力が無い。

加えて、主人公があまりにも頭が良すぎるというか、異常なことをいろいろ受け入れすぎていると思う。そういうキャラクターならそういうキャラクターでそれに伴う一種の「危うさ」、みたいなものを感じさせて欲しかったがなんか薄っぺらいというか、作者が頭の中で考えた人物という感じがする。あと恋愛描写が唐突というか、あまり納得できない。主人公の男性としての魅力が伝わってこないからだと思う。(加えて、主人公は一種の異常人物なので感情移入もできない)

 

・文章に癖がある
文章は読みやすいが、西尾維新的というか(あれほど癖は強くないが)わりと会話芸をさせる書き方をしているので、合わない人はいると思う。
インターフェイスという意味では、文字が大きくしかも文章の区切りが多いのでぱっと目に入りやすい。ただこれも普段小説を読む人などはかえって読みにくいことがあるかもしれない。

 

結論:なんだかんだで語りたくなる作品。買って損なし。
いろいろ批判はしたけど語りたくなる作品には間違いない。買って損はないと思う。(2500円は小説としてみるとやや高いが、ノベルゲームとしては安いほうだと思う)
ただ、正直佳作という感じで、あまり大きな期待はしないほうが良いかも。