英語多読 読書感想 The catcher in the rye

原書で「The catcher in the rye」を読み終わったので、感想+考察を書いてみたいと思います。
まずこの小説は、あらゆる良い小説がそうであるように、読んだ人を映す鏡だと思います。何歳の時に初めて読んだかで感想も変わりそうです。僕は20代前半の今初めてこの小説を読みましたが、10代によんでいたらまた別の何かを受け取れたかもしれない、と思います。
この小説はアメリカのかなり良い男子校を放校処分になった主人公ホールデンが、ニューヨークを彷徨いながら家に帰るまでの数日間を描いた小説です。とても短い時間を描いているので、ホールデンの行動と、その時の思い1つ1つが濃密に描かれています。いわゆるト書きがなく、すべて1人称で話が進みます。
子供から大人になる時に、自分の生まれ育ってきた環境や両親、そして学校にも疑問が生まれてくるものだと思います。僕はそういうことに対してあきらめてしまうことで対応したというか、そもそも最初から期待しなければいい、ということ風に思うことで乗り越えました。ホールデンはそれに対して真正面からぶつかっていった結果学校をやめさせられるわけですが、僕はそれが悪い方法とは思いません。あきらめてしまったとしてもどこかで心の中に澱が蓄積していって、結局どこかで爆発するだけなので。
ただ、ホールデンは学校をやめてもなんとかなるくらいには恵まれているのだ、ということも思います。というのは、ホールデンは親が金持ちなので、今の学校に行く前に2回学校をやめているのですが、まだ親に学校に行かせてもらってるんですよ。
一度ホールデンのことから話を戻しましょう。この小説の舞台は1950年代のアメリカなんですが、その時代の空気みたいなものがすごくよく伝わってきます。それは、家族というものの価値が今とは比べものにならないくらいしっかりしたものだと受け取られていることです。ホールデンが「お母さんはなんでもお見通し」みたいな風に思っているを独白する場面があるんですが、びっくりしました。ホールデンがナイーブだというよりも、そう言えてしまうほど母親という存在が確固としたものだと受け取られていたということだと思います。
この時代はきっと、「親」や「社会」というものが本当にしっかりして、動かしがたいものだと受け取られていたのでしょう。だからこそ少々「反抗」しても大丈夫だったし、60〜70年代のいわゆるカウンターカルチャーに繋がっていくのですね。今は、逆に「親」や「社会」というものがグラグラしすぎている時代です。僕自身も、ホールデンに共鳴する部分がありつつ、どこか羨ましく思う部分もありました。大人がきちんと大人してくれるからこそ、ホールデンがいろいろやりつつも純情な部分というか、まだ子供の部分を大事にできているように思います。
とても面白い小説で、翻訳もたくさんでているので、若い読者に進めたいですね。
それでは。